Album

ナポリ

ⅰ)自然

このナポリの幸福な大地はヨーロッパの他の地域からは海、そしてそこへ到着するためにどうしても通過しなければならない危険地帯によって隔離されている。自然はこのすばらしい地域を秘密の場として保持すべく周囲を危険な環境で囲んでしまった、という言い伝えがあるほどだ。ローマはまだ本当の南とは言えない。いくばくかの甘さはあるが、南の本当の魅力はナポリ王国から始まる。

・・・山は一面オレンジやレモンの木で覆われている。これらの果実のおかげで空気にも心地よい香りが漂う。熟したレモンの匂いに比するものなど、わたしたちの気候にはない。それはメロディー豊かな音楽と同じ効果を想像力に与え、あなたの魂を詩で満たし、あなたは自然に魅惑される。個性の強いアロエや大葉のサボテンがあちこちの街角に見受けられ、それらからアフリカのすばらしい自然についても想像を膨らませることができる。これらの植物から賞賛と畏敬の念が同時に放たれているが、それはかつてこれらの植物が暴力的で力強い自然に属していたことの証でもある。ここはすべてが不思議で、あたかも別世界のようだ。それは、古代の詩人の心にのみ存在していた、とあなたが夢見る世界でもある。しかしナポリに来てみると、古代の詩人たちは単に忠実で真実味のある言葉によってこのいきぶきすら感じられる現実を描いたにすぎない、と腑に落ちる。収穫のワゴンは花輪で覆われ、時々子供たちがマグカップを花輪で飾っている。ナポリの人の魂はあくまで詩で満たされている。(コリンナXI-1)

ⅱ)カタコンベ (納骨所 ) (Catacombe di Napoli)

ナポリには洞穴(カタコンベを指す)があり、そこには何千人ものラザローニと呼ばれた労働者が寝起きしている。彼らはお昼に太陽を浴びるために1時外に出る以外は、妻が機織りをして働いている間一日中そこで寝て過ごす。(ちなみにこのような歴史的事実は確認されていない。)(コリンヌ、2-II)

ⅲ)オリエント (Oriente)

地中海の反対側にはアフリカが迫るが、すでにここナポリでもアフリカを感じ取ることができる。全方向から聞こえて荒々しい叫び声の中に、それがはっきりと何であるかは特定できないものの、そこには確かにアフリカ的なものがただよっている。(コリンヌ、2-II)

ⅳ)ポンペイ(Pompei)

名前をコレクションすることだけに専心する学者たちには、想像力というものが何たるかがまったくわかっていない。過去について詳細に調べあげ、何世紀にもわたる人心について問い、一つの言葉から事実を、一つの行いから国の性格や風習について掌握する。つまりもっとも遠い時代に帰り、人類の黎明期に世界が人間の目にどのように移ったのかについて掌握し、今日複雑化してしまった文明の兆しの始まりについて理解する。そのためには絶え間ない想像による努力を重ね続けていかなければならない。その結果瞑想と学問によってのみ理解される細かい秘密に踏み込み、発見にいたる。(コリンヌ、2-IV)

ローマで見つかった遺跡のほとんどは古代の記念碑に関するもので、古代の政治史について伝えている。それとは対照的にポンペイでは古代人のプライベートな生活について、あたかも彼らが目前に現れたかのように手に取るように理解することができる。この街を灰で埋め尽くしてしまった火山こそがこの街を時の経過から守った。もし建物が空気に触れていたら腐敗してしまっていただろう。しかしここに埋められた記憶は完全な形で保存された。絵やブロンズ像は当時の美しさをすべて保持し、家庭で使われていた陶器も完全な形で残されている。(コリンヌ、2-IV)

Picture taken by mysef : “Mostra Fantasmia Pompei” by Dario Assisi and Riccardo Maria Cipolla in National Museum of Naples, 2018-2019

遺跡によってのみいつの時代か計られ、人々の生活を一気に飲み込んでしまった火山の爆発光によってのみ把握されるこの世界史は、見る者を悲しみの気持ちで打ちのめす。なんて長い時間を人類は経てきたことだろう。なんて長い時間を人類は生き、苦しみ、亡くなっていったのだろう。これらの遺跡に囲まれて吸う空気中にはまだ彼らの痕跡の残る灰が漂っているのだろうか。それとも灰すらも不死が約束される天国に永存しているのだろうか。(コリンヌ、2-IV)

高貴な考えがまだ染み込んでいる灰を散らしてしまうのではないか心配で、呼吸すらおちおちできない。(コリンヌ、2-IV)

A picture taken by myself in the National Museum of Naples
A picture taken by myself in the National Museum of Naples

解説

現在のポンペイにあった古代都市は世界遺産に認定された、言わずと知れた遺跡である。79年の10月の昼過ぎ、ヴェスヴィオ火山の噴火により突如街全体が火山灰に埋もれた結果今日に残る遺跡となった。遺跡からは秋に実る果物が発掘されている。18世紀前半より本格的な街の発掘が行われた。